トンネル工事で無線電子雷管を使用した試験発破に成功、大成建設:スマートコンストラクション
大成建設は、国土交通省東北地方整備局発注の道路トンネル工事で、無線電子雷管を用いた試験発破に成功した。
大成建設は2025年5月30日、国土交通省東北地方整備局発注の「国道13号新及位(しんのぞき)トンネル」の道路トンネル工事で、無線電子雷管「ウインデットIIシステム」を使用した試験発破を実施し、全数で成功したと発表した。
今回の取り組みは、内閣府・戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期の課題「スマートインフラマネジメントシステムの構築」のサブ課題A「革新的な建設生産プロセスの構築」の一環として実施した。
従来の雷管は有線式で、装薬後に雷管から伸びる脚線を全て手作業でつなぎ合わせる必要がある。岩盤の肌落ちリスクのある切羽近傍での作業に時間を要することから、安全性や生産性に課題があった。
大成建設はSIPにおいて、岩質の異なるトンネル内で、通信性能などの確認試験を繰り返し行い、無線電子雷管を用いた発破システムの最適化に取り組んできた。今回はトンネル側壁部で試験を実施。約10立方メートルの岩盤に対し、無線電子雷管を取り付けた親ダイとそれ以外の紙巻含水爆薬を装薬した上で試験発破を行った。
この技術では、装薬後の通信確認、発破信号の送信など、全工程を無線で操作可能。切羽近傍の滞在時間が削減でき、発破作業の安全性と生産性の向上が見込める。
大成建設は2024年、無線電子雷管を機械的に装薬できる装填(そうてん)装置「T-クイックショット」を開発。試験発破に使用した無線電子雷管を組み合わせることで、切羽から離れた場所から安全で効率的に装薬作業ができる。
大成建設は今後、SIP開発において関係各署と連携し、通信試験に基づく無線電子雷管の信頼性向上や無線電子雷管を用いた試験発破の継続的な実施に取り組んでいく。また、社会実装に向けて、取り扱い方法のマニュアル化や関連基準類の整備も進める方針だ。
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